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劇画チックでほのぼの!育児エッセイ漫画『ヒゲ母ちゃんと娘さん』の感想

元気を出したい。そう思った時に過去更新分も再読するのが、ヤマモト喜怒さんの『ヒゲ母ちゃんと娘さん』だ。

www.funwarijump.jp

 

ヒゲ母ちゃんと娘さん 1 (ヤングジャンプコミックス)

ヒゲ母ちゃんと娘さん 1 (ヤングジャンプコミックス)

 

 

ゆるい。ゆるすぎる。なんだヒゲ母ちゃんって!
その理由は絵のインパクトもあるのだが、何よりも「押し付けがましさがない」ことが一番の要因だ。

育児エッセイは、まるで訓戒のような台詞が出がちだ。
育児とはこういうもの、と、口頭…漫画の場合は台詞か独白だが、育児経験者によるありがた〜〜い、諭すようなお言葉が出てくることが多い。ポエムになっていることもある。

だが、ヒゲ母ちゃんはそれが感じられない。

ギャグ漫画なのである。

しかし、ヒゲがあって筋肉隆々の母ちゃん(?)とむっちむちの娘さん、そしてモヒカンの世紀末な旦那さんに巨体猫のゴメスくんは、この独特の画風によって異質な印象を受けるものの、そのフィルターを外すか慣れてしまうと、実に穏やかで自虐のない素直な育児エッセイ漫画になる。それが面白い。

 

ヒゲ母ちゃんは、娘さん(この呼び方が可愛い)を愛している。
元気いっぱいの娘さんが大暴れしても、ヒゲ母ちゃんも世紀末な旦那さんも怒らない。くよくよしない。そうだ、くよくよしない、それが良いのだ。

 

さきほど訓戒と言う言葉を使ったが、もっと言えば「親としての悩みを共感して欲しい」と言う願いがあまりに強過ぎる育児エッセイは、どうにも気軽に読めないのだ。
「子どもが言う事を聞かない」→「子どもにも言い分がある」→「気づかなかった自分を反省する」……この流れがあったとして、願いが強過ぎる育児エッセイでは、何ページにも渡って「私はダメな親だ…」「どうしたらいい…」と煩悶する姿が描かれる。
この悩みは、恐らく、育児経験者やあるいは育児のまっただ中の人は共感できるのだろう。そして読者ターゲットは、そういう人達だ。

 

しかし、『ヒゲ母ちゃんと娘さん』は、ゆるいのである。
「ん〜〜〜〜ま、いっか!」で済んでしまうのである。もはや爽やかと言っていいが、決して娘さんを見捨てているとか、そういうことは全くない。だが娘さんへの愛を押し付けるような表現もない。ただただ、表現が素直なのである。

 

つまり、悩みを作中では切り捨てているのだ。実際、育児をしていく上では悩みも尽きないだろうが『ヒゲ母ちゃんと娘さん』の読者ターゲットは、悩みを持つ人よりは育児経験が乏しい、あるいは皆無の人なのかもしれない。
「私は育児が楽しい!大変だけど、娘さんと一緒で楽しい!」悩む親御さんにとっては、ヒゲ母ちゃんの愛情は真っ直ぐで眩し過ぎる可能性がある。決して作中では、台詞でそう高らかと宣言しているわけではないのだが、まさに行間(コマ間…?)から読みとれてしまうのだ。

 

育児エッセイは教訓めいたものになりがちだ。それがどうも苦手な人もいる。そんな人には、ただただ素直な育児を楽しんでいる、そう感じる『ヒゲ母ちゃんと娘さん』を奨めたい。そして育児経験がない人も、ゆる〜いギャグ漫画として読めてしまう。

 

なお、『ヒゲ母ちゃんと娘さん』ふんわりジャンプでWEB連載をしているため、無料で読むことができる。※一部エピソードはコミックスにのみ収録されている。

ヒゲ母ちゃんと娘さん | ふんわりジャンプ

 

ミックスは現在3巻まで発売中。

ヒゲ母ちゃんと娘さん 2 (ヤングジャンプコミックス)

ヒゲ母ちゃんと娘さん 2 (ヤングジャンプコミックス)

 
ヒゲ母ちゃんと娘さん 3 (ヤングジャンプコミックス)

ヒゲ母ちゃんと娘さん 3 (ヤングジャンプコミックス)

 

 要約すると、肩肘張らずに読める育児ギャグエッセイ。
でもちゃんと愛情を読み取れる。ううぅん、楽しそうなご家庭だ。